豊田章男 名言から学ぶトヨタのブレない軸と未来への指針

豊田章男 経営
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豊田章男 名言」というキーワードでこの記事にたどり着いた皆さん。多くの人々が注目する豊田章男氏の言葉には、トヨタの長い歴史の中で培われてきた確固たる哲学と、激動の時代におけるリーダーとしての覚悟、そして未来への強い意志が凝縮されています。

トヨタ生産方式の根幹をなす「自働化」や「ジャスト・イン・タイム」といった考え方は、単なる効率化の追求ではなく、「誰かのために」という創業以来の温かい想いに深く根差しています。また、社長就任から約5000日間、「トヨタを取り戻す」という強い思いで戦い続け、「もっといいクルマをつくろう」というブレない軸のもと、たとえ失敗を恐れずとも「バッターボックスに立つ」という挑戦を奨励し、現場に根差したリーダーシップを発揮してきました。

この記事では、豊田氏が語る言葉の数々から、彼の思想の真髄、カーボンニュートラル実現に向けた全方位での取り組み、メーカーの垣根を越えた未来づくりへの呼びかけ、そして若い世代への期待など、「トヨタらしさ」と未来へのビジョンを読み解いていきます。

この記事のポイント
  • 豊田氏が考えるトヨタ生産方式の原点や、自働化・ジャスト・イン・タイムといった根幹をなす考え方の真意
  • 社長として経験した数々の危機や困難の中で、挑戦する姿勢や現場主義、そして責任を果たすリーダーシップ
  • カーボンニュートラルや「CASE」といった自動車産業の変革期における、トヨタの全方位的な取り組みと、メーカーの垣根を越えた未来づくりへの考え
  • 将来を担う若い世代への期待や、トヨタグループ全体で進むべき方向性を示す「次の道を発明しよう」というビジョンに込められた想い

豊田章男氏の「名言」とは

インデックス
  • TPSの二本柱「自働化」「JIT」
  • 「ニンベンの自働化」とは
  • 「ジャスト・イン・タイム」の本質
  • 改善は現場から生まれる
  • 「1人工」に見る時間への価値観

TPSの二本柱「自働化」「JIT」

トヨタ生産方式(TPS)は、現在では多くのビジネス書で紹介され、社内用語という枠を超えた考え方として広く知られています。

豊田章男氏によれば、このトヨタ生産方式の根幹には、会社設立以前から受け継がれる二つの考え方のポイントが存在します。それが「ジャスト・イン・タイム」と「ニンベンのついた自働化」です。

これらの概念は、入社以来ずっと二本の柱とされてきましたが、改めてその本当の意味を学び直す機会が設けられるほど、その本質理解は重要視されています。これらの基本原則を深く理解することが、今日の「トヨタらしさ」を取り戻し、未来へ向けたフルモデルチェンジを進める上での基盤となるのです。

「ニンベンの自働化」とは

「ニンベンのついた自働化」は、単なる自動化ではなく、機械に異常が発生した際に機械が自ら停止する仕組みを指します。

この考え方の原点は、豊田佐吉翁が夜なべをする母親の機織り仕事を楽にしたいという思いから生まれた自動織機にあります。

佐吉は、糸がなくなったり切れたりする異常を検知し、自動で機械が止まる織機を発明しました。これにより、作業者は常に機械を監視している必要がなくなり、一台で複数の機械を扱うことが可能になったのです。

この仕組みの目的は、あくまで「誰かの仕事を楽にしたい」という現場の作業者を思いやる気持ちであり、結果として生産性向上に繋がったのです。豊田章男氏の解釈では、この「自働化」の本質は、「やっぱりヒト中心にしてくれ」という思想にあります。

「ジャスト・イン・タイム」の本質

トヨタ生産方式のもう一つの柱である「ジャスト・イン・タイム」は、豊田佐吉翁の息子であり、トヨタ自動車の創業者である豊田喜一郎氏が導入した考え方です。この概念はよく「必要なものを、必要な時に、必要なだけ」というフレーズで説明されます。

しかし、豊田章男氏はこれをさらに深く、「リードタイム」という言葉で解説します。リードタイムとは、受注からモノやサービスが提供されるまでの時間を意味します。

お客様(後工程、あるいは最終的なエンドユーザー)が欲しいものを欲しい時に提供するためには、膨大な在庫を持つのではなく、各工程のリードタイムを徹底的に短くすることが本質であると説いています。

寿司屋が注文を受けてからネタを切り、握って提供するように、クルマ作りもリードタイムを短縮する努力の積み重ねが重要になるのです。

改善は現場から生まれる

トヨタ生産方式の根底にある「改善」の考え方は、豊田佐吉翁の発明の歴史に深く根ざしています。佐吉翁の発明は、常に現場の作業者が抱える困難や負担を軽減したいという思いから生まれました。

彼は現場で肺を患っていた作業者のために、糸を口で吸い出す必要のない木管の発明を行いました。このようなエピソードからもわかるように、改善のタネは机上の空論ではなく、現場での日々の観察や体験から生まれるものなのです。

豊田氏は「肩書きなんて関係ない。物に、現場に近い人が勝ちなんです」と述べ、「現地現物」を重視する姿勢を示しています。現場で何が起こっているのかという事実確認こそが、改善を進める上での最優先事項となる企業文化があるのです。

豊田章男

豊田章男「名言」に見る哲学

インデックス
  • 「もっといいクルマ」の追求
  • 「バッターボックス」への挑戦
  • 「意志ある踊り場」の捉え方
  • 「ヒト中心」の思想
  • 「町一番」とグローバル
  • 変革へのリーダーシップ
  • 自分と未来は変えられる
  • 豊田章男が語った、トヨタらしさと未来への名言

「1人工」に見る時間への価値観

トヨタでは「1人工(いちにんく)」という考え方を追求しています。これは、一人の作業者が一日でこなすことのできる仕事量を指す言葉です。

なぜこれを追求するのでしょうか。私たち誰もが一日に与えられた時間は24時間であり、それは皆に等しい条件です。働く人々には家庭があり、プライベートな時間も大切です。会社に多くの時間を費やしてくれている従業員に対して、上司の役割は「意味のある仕事をさせる」ことだと豊田氏は語ります。つまり、1人工の追求とは、付加価値をつける仕事を増やし、手待ちややり直しといったムダな仕事を徹底的に排除することです。これは労働強化とは異なり、作業者の時間を大切にし、より有効に使えるようにするという価値観に基づいています。

「もっといいクルマ」の追求

豊田章男氏が社長として約5000日の間、一貫して言い続けてきた「ぶれない軸」が、「もっといいクルマを作ろうよ」という言葉です。

彼は、お客様に喜んでいただける「いい車」を作り続けることこそが、全てのステークホルダーの期待に応え、持続的な成長を可能にする唯一の道だと信じていました。この言葉は、社長就任当初は具体的な目標数字を示さないとして批判されることもあり、なかなか理解されませんでした。

しかし、彼はこの軸を揺るがせることなく、モータースポーツを起点とした車両開発など、様々な活動を通じて「もっといいクルマ作り」を追求し続けました。危機に直面した際にも、「もっといいクルマ」というシンプルな目標が、進むべき道を選ぶ指針の一つとなったのです。

「バッターボックス」への挑戦

自動車産業を取り巻く環境は、CASEなどの技術革新やカーボンニュートラルへの取り組みにより、かつてないスピードで変化しています。

このような正解が見えない時代だからこそ、豊田氏は「バッターボックスに立とう」と挑戦を呼びかけます。バッターボックスに立つということは、失敗を恐れずにチャレンジすることです。失敗は挑戦している証であり、失敗がないのは目標が低く安全な環境にいることだと指摘します。

たとえ三振しても、「ナイススイング!」と応援し合える風土を作ることを目指しています。豊田氏自身もまた、「失敗の許されない」カーボンニュートラル社会実現という大きな目標に向けたバッターボックスに立ち、その姿をもって仲間を鼓舞しています。

「意志ある踊り場」の捉え方

豊田章男氏の社長在任期間は、リーマンショック、大規模リコール問題、東日本大震災、円高など、数々の危機への対応に追われた日々でした。

このような有事においては、迅速な状況変化への対応や危機対応が求められます。正解が分からず、未来がはっきり見えない状況でも、行動すること、決断することが不可欠になります。行動すれば失敗することもありますが、失敗をしても決断すれば協力する仲間はおり、リーダーはその責任を取る覚悟が必要です。

このような厳しい状況下での経験を通じて、彼は自身が「決断者であり、責任者である」という役割を果たすことができたと考えています。不確実な時代だからこそ、状況を見極め、意図的に立ち止まって方向性を定めたり、困難な状況に直面した際に、どのように捉え、どのような行動を選択するのか、その「意志」が未来を切り拓く鍵となります。

「ヒト中心」の思想

前述の「ニンベンのついた自働化」でも触れましたが、豊田章男氏の根幹にある思想は「ヒト中心」であると言えます。これは単に工場で働く人々だけでなく、お客様、地域社会、そして共に働く仲間全てに向けられています。

お客様が必要とする「もっといいクルマ」を作り続けることはもちろん、地域に根差した経営を行い、それぞれの町で一番愛される企業を目指すこと、そして共に働く仲間を信じ、支え合い、現場の人々がやりがいを感じ、時間を有効に使えるようにすること、これら全てが「ヒト中心」の思想に基づいています。

さらに、彼は「自分自身のためではなく、社会のため、次世代の笑顔のために戦う」という創業の原点を強調しており、これはまさに持続可能な社会の実現に向けたSDGsの視点とも重なるものです。

「町一番」とグローバル

かつてトヨタが「世界一」を目指す際に、本社に掲げられた販売目標のポスターを見て、豊田章男氏は自身は何をすればいいのか戸惑いを感じた経験を語っています。

それに対し、彼は「町一番」の企業を目指すことの重要性を説きました。町一番になれば、お客様の顔が見え、喜んでいる声も、怒っている声も直接聞くことができます。怒っているお客様の声から改善点を見つけ、それに取り組むことで、いつかは笑顔が増え、お客様が増えていくと考えたのです。この「町一番」の集合体が、結果として世界でのシェアに繋がるはずだという考え方です。

これは、抽象的なグローバル目標だけを追うのではなく、地域に深く根ざし、一人ひとりのお客様との関係性を重視するという、より具体的で人間的なアプローチと言えます。

変革へのリーダーシップ

「100年に一度の大変革期」と呼ばれる時代において、豊田章男氏はそのリーダーシップを発揮してきました。彼のリーダーシップは、従来の根回し型ではなく、「この指止まれ」と進むべき方向を示すスタイルだと表現されています。

彼は自工会会長として、自動車産業が未来のモビリティ社会で主役であり続けるための「ミッション」を掲げ、多くの企業や業界の垣根を越えた仲間がその想いに共感し、現場の力で現実を変えていきました。コロナ禍や自然災害、半導体不足といった数々の危機においても、何をすべきかという「ミッション」が明確であったため、素早く動くことができたと振り返っています。

旗を振り続けること、そして危機に際して決断を下し、責任を負う覚悟こそが、変革期における彼のリーダーシップの重要な要素でした。

自分と未来は変えられる

行動を起こす上での決意について問われた際、豊田章男氏は端的に「自分と未来は変えられる」と答えました。これは「他人と過去は変えられない」という現実と対比される言葉です。

つまり、変えることのできない過去や他者に囚われるのではなく、自分がコントロールできる「自分自身の行動や考え方」に焦点を当て、それによって「未来」を創っていくことの重要性を説いています。

企業という大きな組織もまた、持続的に永続させていく必要がありますが、その中で働く個人は一時的なバトンタッチの担い手であり、個人の努力が100年先の会社像に繋がっていくと考えれば、自身の気持ちや行動を変えることには大きな意味がある、とこの言葉は示唆しています。

豊田章男が語った、トヨタらしさと未来への名言

  • トヨタ生産方式の原点は働く人を楽にしたいという佐吉翁の想いだ
  • 自働化とジャスト・イン・タイムがトヨタの変わらぬ二本柱である
  • ニンベンのついた自働化は働くヒト中心の考え方である
  • 1人工の追求は働く仲間の時間を大切にすることだ
  • ジャスト・イン・タイムとはお客様に素早く届けるためにリードタイムを短くすることだ
  • 「もっといいクルマをつくろう」という想いが何があってもぶれない会社の軸だ
  • 困難な状況でも「バッターボックスに立つ」というチャレンジ精神が大切だ
  • 失敗を恐れず、挑戦し続ける人を応援する風土を築くべきだ
  • 社長就任からの約5000日間は「トヨタを取り戻す」という強い思いで戦ってきた
  • 現場に一番近い社長でありたいと常に思ってきた
  • 肩書ではなく、日々現場で何が起こっているかの事実確認が重要だ
  • 現地現物によって人は学び育つというのが変わらぬ信念だ
  • 自分と未来は変えられるが他人と過去は変えることはできない
  • 未来の姿は若い世代の方が想像しやすい
  • トヨタグループのビジョンは「次の道を発明しよう」であり、そこには「誰かを思い、力を尽くそう」など5つの心構えがある
  • カーボンニュートラル実現に向けてBEVも含めた全方位で本気で取り組んでいる
  • 自動車産業全体で技術ブレークスルーとサプライチェーンでの取り組みが必要だ
  • 有事のような危機の時こそ明確なミッションを持つことが重要だ
  • メーカーの垣根を越えて共に未来をつくっていくことが大切だ
  • 子供たちが将来「あの頃の大人たちは何をやっていたんだ」と言われないように行動することが大人の責任だ















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