どうも、トヨリスト運営者のトヨタロウです。
街で見かけるあの「ジャパンタクシー」を、あえて自家用車として所有する。なんだかロマンがありますよね。独特のデザインと、あの広々とした後部座席。シエンタやノアとは違う選択肢として、気になっている方も多いんじゃないでしょうか。
でも、いざ「ジャパンタクシーを自家用で」と考えると、たくさんの疑問が湧いてきませんか? そもそも新車や中古の価格はいくらなのか、LPG車って維持費や燃費、税金はどうなるのか。LPGスタンドって近所にあるんだろうか…。
それに、ネットで調べても「後悔した」なんて声や、致命的なデメリット(例えば、後部座席の窓が開かないとか、エアコンが…とか)もチラホラ。荷室の広さや使い勝手も、ファミリーカーとして本当に大丈夫なのか、不安になりますよね。
この記事では、そんなあなたの不安をすべて解消します。ジャパンタクシーを自家用として選ぶリアルな現実、メリット、そして見落としがちなデメリットのすべてを、プロの視点(と、ちょっとマニアックな視点)で徹底的に分析しました。
- 新車・中古車の価格とグレード選びの現実
- LPG車の維持費(燃費・税金・検査)の全て
- 自家用で後悔しやすい致命的なデメリット
- どんな人にジャパンタクシー自家用が向いているか
ジャパンタクシー自家用の購入ガイド

まずは「買う」ときのリアルな話から。新車価格はノアやヴォクシーと競合しますし、中古車は「元タクシー」という大きな壁があります。乗降性という魅力に隠れた「自家用としての欠点」を、運転席、後部座席、荷室の3つの視点で厳しくチェックしていきますよ。
新車価格とグレードの違い
ジャパンタクシーを自家用として新車で買う。これ、もちろん可能です。トヨタの販売店で普通に「白ナンバー」で登録できます。ただ、まず知っておいてほしいのは、この車は「安さ」で選ぶ車じゃない、ってことです。
グレードは大きく分けて「和(なごみ)」と「匠(たくみ)」の2種類。それぞれの新車価格(消費税込)はこんな感じです。
- 標準グレード「和(なごみ)」: 345万5100円
- 上級グレード「匠(たくみ)」: 368万600円
どうです? 約345万円〜368万円。この価格帯、ピンと来ますよね。
そう、トヨタの「シエンタ」の最上級グレードや、「ノア」「ヴォクシー」のハイブリッド上級グレードとガチンコで競合するんです。
この価格帯のミニバン(例えば使い勝手抜群のシエンタや、大人気のノア/ヴォクシー)なら、7人乗り3列シート、多彩なシートアレンジ、後部座席専用の快適なエアコン、大画面ナビ、山ほどある収納…と、ファミリーカーとしての快適装備が全部入りですよね。
ジャパンタクシーを新車で選ぶということは、これらの「自家用車としての快適性」をすべて放棄して、ジャパンタクシーにしかない「後席の圧倒的な乗降性」という一点に投資する、ということを意味します。この覚悟、ありますか?
「匠」と「和」は約23万円差。自家用なら「匠」一択な理由
「じゃあ、少しでも安い『和』でいいか」と思ったあなた、ちょっと待ってください。この約23万円の価格差、自家用として使うなら絶対に「匠」を選ぶべきだと私は断言します。
プロのドライバーさんたちのレビューを見ても、「後席シートヒーターとブロワーで快適」といった声がありますが、これらは上級グレード「匠」の装備である可能性が極めて高いです。家族や大切な人を乗せるなら、快適装備は必須ですよね。
【表1】 グレード別 主要装備比較(自家用視点)
項目 標準「和(なごみ)」 上級「匠(たくみ)」 自家用視点での分析 後席エアコン 不明(非搭載か送風のみ) リアヒーター + 送風ファン 致命的:どちらも「冷風(クーラー)」は出ません。 内装加飾 標準(商用的) メッキ加飾、木目調パネル等 「匠」でようやく自家用としての質感が少し出るレベル。 快適装備 基本装備のみ 後席シートヒーター、快適温熱シート(運転席)等 冬場の快適性を考えると「匠」が必須。 安全性 Toyota Safety Sense (標準) Toyota Safety Sense (標準) 安全性は両グレードで同等なのは良い点。
特に重要なのは「後席エアコン」問題。これについては後ほど詳しく解説しますが、「匠」ですら冷風が出ない可能性があるんです。それでも、後席の快適性を少しでもマシにするには「匠」を選ぶほかありません。自家用として「和」を選ぶのは、正直言って現実的ではない、と私は思いますよ。
中古車購入の注意点とリスク

「新車は高いから、中古車でジャパンタクシーを…」と考える方も多いでしょう。確かに、中古車市場にはジャパンタクシーが流通しています。価格もこなれてきているように見えます。
例えば、こんな相場データがあります(2025年11月現在)。
- 2022年式(3年落ち) / 走行距離2万km: 買取相場 199.5万円~248.5万円
- 2022年式(3年落ち) / 走行距離10万km: 買取相場 116.9万円~148.8万円
このデータを見て「お、3年落ち2万kmならアリかも」と思ったあなた。そこに最大の落とし穴があります。
ちょっと冷静に考えてみてください。
「3年落ちで10万km」という、自家用車ではありえない走行距離のデータが平然と存在している。これが何を意味するか。
答えは単純です。
中古車市場に出回るジャパンタクシーのほぼ全てが「元タクシー」または「元ハイヤー」なんです。
ネットのオーナーレビューを見ても、40万km走っている個体や、「元タクシー」と明記して中古で買ったオーナーさんの情報が出てきます。毎日毎日、不特定多数のお客さんを乗せ、長時間のアイドリングとストップ&ゴーを繰り返し、過酷な環境で使われてきた車両。それが、中古ジャパンタクシーの「標準」なんです。
「元タクシー」車両の隠れたリスク
「3年落ち2万km」なんていう、夢のような好条件の個体は、法人の役員送迎用などで大切に使われたレアケースか、あるいは何らかの理由で早期に手放された特殊な車両。市場の標準ではありません。
安価な中古ジャパンタクシーに潜むリスクは…
- エンジンの疲弊: 見た目や走行距離以上に、長時間のアイドリングでエンジンは消耗しています。
- ハイブリッドバッテリーの劣化: 充放電サイクルが尋常じゃない回数になっています。
- 電動スライドドアの消耗: 1日に何十回、何百回と開閉されたドアです。
- 内装(特に運転席シート)のヘタリ: プロのドライバーさんからも「シートがシワシワになる」と不満が出るほどの耐久性です。中古車は推して知るべし。
「安物買いの銭失い」になる可能性が、他のどの中古車よりも桁違いに高い。それがジャパンタクシーの中古車選びの現実ですよ。
もちろん、リセールバリュー(再販価値)も低いと考えるのが妥当です。「元タクシー」の車を、次に買いたいと思う一般ユーザーがどれだけいるか。それを考えれば分かりますよね。中古で買うなら、「買って数年乗ったら、ほぼ価値はゼロになる」くらいの覚悟を持って、徹底的に整備歴を調べてからにしてください。
後悔する?後部座席の窓とエアコン

ジャパンタクシーの最大の魅力は「後部座席」のはず。でも、実はその後部座席にこそ、自家用として使った場合に「後悔」する可能性が最も高い、致命的な欠陥が2つも潜んでいるんです。
この車をファミリーカーとして検討しているなら、このセクションは絶対に読み飛ばさないでください。
【欠陥1】後部座席の「右側の窓」が開かない
信じられますか? 2025年の今、新車で買える車で、後部座席の窓が開かないんです。
もちろん、これには理由があります。タクシーとして運用する際、お客さんが降りるのは車道の反対側、つまり「左側」ですよね。安全確保や料金授受のために、左側の窓だけが開けば良く、右側(車道側)は開かない仕様になっているんです。
…いや、理屈は分かりますよ。でも、これ、自家用車ですよね?
家族でドライブ中、子供が「窓開けて外の空気吸いたい!」と言っても、「ごめん、そっち側は開かないんだ…」と謝る。換気したくても、片側しか開かない。これ、かなりのストレスじゃないですか?
「左側が開くならいいじゃん」と思いますか? でも、家族が右後部座席に座ることも当然ありますよね。そのたびに不便を感じる。この小さなストレスが、毎日続くとどうなるか。想像に難くありません。
【欠陥2】後部座席に「冷風(クーラー)」が来ない
これが、自家用としてはっきり言って「致命的」な欠陥です。
プロのドライバーさんからも「送風ファンじゃなく冷風を後席に欲しい」という不満が多数挙がっています。そう、ジャパンタクシーは、あの広い後部座席に、クーラーの冷風を送る機能がないんです。
上級グレードの「匠」には「リアヒーター+送風ファン」が付きますが、これはあくまで冬用のヒーターか、車内の空気を循環させる「送風」だけ。前席でガンガンにクーラーを効かせても、その冷気が後ろまで届く前にぬるくなってしまいます。
真夏のチャイルドシートは地獄です
考えてみてください。真夏の炎天下、後部座席のチャイルドシートに座る赤ちゃんや小さなお子さん。大人は運転席で涼しくても、後部座席は直射日光も相まってサウナ状態です。
「送風ファン」を回しても、送られてくるのは車内の「ぬるい空気」。これ、熱中症のリスクさえありますよ。
同価格帯のノアやシエンタなら、天井にサーキュレーターが付いていたり、後部座席専用のエアコン吹き出し口があったりするのが当たり前。ジャパンタクシーは、その「当たり前」が、ないんです。家族(特に奥さんやお子さん)から不満が噴出すること間違いなし。私なら、家族を乗せる車としてこれを選ぶ勇気はありません。
乗降性という「ハードウェア」は最高レベルなのに、快適性という「ソフトウェア」に看過できない欠陥がある。これがジャパンタクシーの後部座席の真実です。
致命的なデメリット。荷室と収納
「見た目もハッチバック風だし、車内も広いんだから、荷物もたくさん積めるだろう」…そう思っていませんか? もしそうなら、その期待は残念ながら裏切られます。ジャパンタクシーは、「収納」と「荷室(ラゲッジスペース)」においても、自家用として致命的なデメリットを抱えています。
【デメリット1】ドライバーを無視した「収納の絶望的な欠如」
まず、運転席周り。
プロのドライバーさんから「ドライバーを無視した車」「収納スペースがなさすぎる」と辛辣な意見が出るほど、モノを置く場所がありません。
考えてみてください。自家用車として毎日運転するとき、どこに置きますか?
- ティッシュボックス
- 飲み物のペットボトルや缶(人数分)
- スマートフォン
- サングラス
- 子供のお菓子やウェットティッシュ
一般的なファミリーカーなら、ダッシュボード、センターコンソール、ドアポケットに、これらを「定位置」に置けるよう工夫されていますよね。ジャパンタクシーには、その「工夫」が絶望的に足りません。
業務用の道具(日報や釣銭機)を置くスペースはあっても、自家用オーナーの私物を置く場所は想定されていないんです。毎日乗るたびに「あー、これどこに置こう…」とストレスを感じる。利便性が著しく低いと言わざるを得ません。
【デメリット2】LPGボンベが塞ぐ「柔軟性のない荷室」
次に、荷室(ラゲッジスペース)。
プロの意見は「スーツケースは積める」「いや狭い」と分かれますが、これは荷室が「特定の形状の荷物(=スーツケース)」の積載に最適化されているからです。
自家用としての本当の問題点は、LPGボンベを搭載している構造的な制約にあります。
ジャパンタクシーは、荷室の後ろ(後部座席の背後)にLPGボンベを積んでいます。このため、後部座席を倒して荷室とつなげる「トランクスルー」が絶対にできません。
これがどれほど不便か、分かりますか?
ジャパンタクシーで「できない」こと
- ベビーカーを畳まずにサッと積む(高さと奥行きが足りない可能性大)
- 子供用の自転車を積む
- キャンプ用品やバーベキューコンロを積む
- IKEAやコストコで買った長尺の家具・商品を積む
見た目はハッチバック風ですが、その実態は「トランクスルーができないセダン」と同じか、それ以下。積載の柔軟性は、シエンタやカローラフィールダーに遥かに劣ります。
家族4人での旅行荷物すら、スーツケースの形状を選ばないと積めないかもしれません。この荷室で、あなたの家族のニーズに応えられますか? 購入前に、普段積んでいる荷物(特にベビーカーなど)が本当に積めるか、実車で確認することを強くお勧めします。
運転席の快適性と動力性能

ここまで後部座席や荷室の厳しい話が続きましたが、「じゃあ運転するドライバー(自分)は快適なのか?」という点も重要ですよね。ここにも、自家用として見ると賛否が分かれるポイントがあります。
【満足点】長時間運転の「快適性」は高い
まず良い点から。プロのドライバーさんからは「とにかく快適の一言」「一日中乗務しても疲れない」という声が多数あります。
これは、長時間運転を前提としたシート設計や、ハイブリッドシステムによる低速走行時の静粛性が効いている証拠です。自家用としても、長距離ドライブや帰省などで高速道路を長時間走る際の「疲労軽減」には、大きなメリットがあるかもしれません。
また、独特のフェンダーミラーも、「視線移動が少なくて楽」と評価されています。安全性についても、Toyota Safety Senseやコーナーセンサーが標準装備されている点は安心材料ですね。
【不満点】運転の「楽しさ」と「余裕」は皆無
しかし、その「快適性」と引き換えに、多くの「不満点」が挙げられています。
不満1:シートの質と耐久性
プロから「運転席のシートがしわしわになる」という意見があります。これは、シート表皮の耐久性が低い可能性を示しています。中古車を狙う場合、運転席のヘタリ具合は要チェックポイントです(前述の通り)。
不満2:深刻な「動力性能の不足」
これが一番の問題かもしれません。「かなり踏み込まないと加速しない」「非力なので(エコ運転してると)流れに乗れない」。これ、プロが「一人で」乗っている時の感想ですよ。
考えてみてください。その「非力」な車に、家族4人(または5人)と荷物を満載した状態で、高速道路の合流や登坂車線を走るんです。
アクセルを床まで踏み込んでも、エンジンが唸るだけで前に進まない…そんなストレスフルな、いや、「危険」な状況が容易に想像できます。
不満3:高速での「走行安定性の低さ」
「重心が高く、高速のカーブで揺れる」という意見もあります。これは、乗降性のために低床・ハイルーフにしたトールワゴン型の宿命です。
揺れが収まりにくいということは、後部座席に乗せた家族(特に子供)が、車酔いをしやすい可能性が高いということです。
「疲れない」けど「楽しくない」。そして「非力で」「揺れる」。これがジャパンタクシーの運転席のリアルな評価です。あなたは、この車で家族とドライブに行きたいと思えますか?
ジャパンタクシー自家用の維持費とLPG
購入のハードルを越えても、次に来るのが「維持」の問題。ガソリン車とは全く異なるLPG車特有のルール、特に燃料の充填と法的な検査義務は最大の障壁です。経済性の真実と、税金の現実について、詳しく見ていきましょう。
LPGスタンドの場所と営業時間

ジャパンタクシーの燃料は、ガソリンではなく「LPG(液化石油ガス)」、いわゆるオートガスです。このLPG車を自家用で所有する上で、最大の障壁となるのが「燃料の充填」です。
「ガソリンスタンド(GS)のついでにLPGも入れられるでしょ?」…そんな風に考えていたら、即「ガス欠」で立ち往生しますよ。
【問題1】スタンドの場所が特殊で、数が少ない
LPGスタンド(オートガススタンド)は、ガソリンスタンドのように「どこにでもある」ものではありません。その数は非常に限られており、多くがタクシー会社や運送会社の近くにポツンと存在しています。
近所にスタンドがあるか、まずは「全国LPガス協会(全国LPガススタンド協会)」が提供しているマップなどで、ご自身の生活圏を検索してみてください。おそらく、その少なさに愕然とするはずです。
【問題2】営業時間が致命的に短い
ガソリンスタンドのように24時間営業なんて、まず期待できません。
例えば「8:00~22:00」ならまだ良い方で、都心部ですら「日曜・祝日は20:00まで」なんていう制約があります。
これが何を意味するか?
- 深夜や早朝の出発前に満タンにできない。
- 日曜日の夕方に「あ、ガスがない」と気づいても、もう閉まっている。
- 見知らぬ旅行先や帰省先でガス欠になったら、その場で立ち往生。
これはもう、電気自動車(EV)の「充電不安」に非常に似た、**「充填不安」**です。家族を乗せた長距離ドライブでは、常にLPGスタンドの場所と営業時間を意識したルート計画が必須。ガソリン車ではあり得ない、深刻な運用上の制約ですよ。
【問題3】自家用車(白ナンバー)は充填できるのか?
LPGスタンドの利用者の大半は、タクシーやトラックなどの業務用車両です。そこに自家用車(白ナンバー)で行って、充填を拒否されないか…不安になりますよね。
リサーチした限り、明確に「拒否される」という情報はありませんでした。しかし、スタンドが業務用の契約車で混雑している場合、一般客(自家用車)は後回しにされる、あるいは「使い方が分からない」といった理由で時間がかかる可能性は否定できません。一般のガソリンスタンドのような「気軽さ」は、全くないと考えた方が良いでしょう。
LPG車の実燃費と航続距離

「LPGは燃料費が安い」というイメージ、ありますよね。確かに、LPG(オートガス)は、ガソリンに課される「ガソリン税」がかからないため、リッターあたりの単価はガソリンより大幅に安価です(例:ガソリン180円/Lの時、LPGは100円/L前後)。
「じゃあ、やっぱり経済的じゃん!」と思うのは早計です。ここにも落とし穴があります。
「単価」は安いが「実燃費」は微妙
プロのドライバーさんから「ハイブリッドのわりに燃費が微妙」「夏場の燃費が悪すぎる」という不満が多数挙がっています。
あるオーナーさんの実燃費記録では 13.67km/L というデータもありますが、これはあくまで一例。タクシー業務(ストップ&ゴーが多い)と自家用(高速走行も含む)では燃費も変わってきますが、最新のガソリンハイブリッド車(例:ヤリスやアクアの25km/L超え)と比べると、見劣りするのは事実です。
燃料単価がガソリンの6割だとしても、燃費がガソリン車の半分なら、トータルの燃料コストは変わりませんよね? 「単価が安い」というメリットは、「燃費が悪い」というデメリットで相殺されてしまう可能性が十分にあるんです。
航続距離の短さという「二重苦」
さらに、プロからは「燃料タンクをもう少し大きくしてほしい」という意見も。これは、航続距離が短いことを示唆しています。
思い出してください。LPGスタンドは「数が少なく」「営業時間が短い」んでしたよね。
そこに「航続距離が短い(=タンクが小さい)」が加わるとどうなるか。
「ただでさえ不便なスタンド探しを、より頻繁にやらなければならない」という、まさに二重苦。これがLPG車オーナーの現実なんです。
「燃料充填バルブが奥にあってやりづらい」(スタンド従業員の意見)なんていう細かいストレスも、充填に時間がかかる一因になっているかもしれません。
特有の維持費とLPGボンベ検査
ガソリン車にはない、LPG車特有の「隠れコスト」。これを見落とすと、購入後に「こんなはずじゃなかった」と後悔することになりますよ。
ジャパンタクシーは、燃料タンクとして「高圧ガスボンベ」を搭載しています。そのため、高圧ガス保安法という法律に基づき、ガソリン車にはない特殊な検査が法的に義務付けられているんです。
6年ごとに「容器再検査」が必須
具体的には、LPGボンベ(容器)本体とバルブ類は、6年ごとの「容器再検査」を受ける必要があります。
自家用車(白ナンバー)の場合、新車登録から5年目(2回目)の車検時に、車検と同時に受けることが推奨されています。中古車で買う場合は、この検査をいつ受けたのか、あるいは「あと何年で検査時期が来るのか」を絶対に確認する必要があります。
数万円の「見えない時限爆弾」
「で、その検査、いくらかかるの?」…気になりますよね。
LPG関連のウェブサイトを調べても、「具体的な費用は記載されていない」のが実情です。これは、検査工場によって、あるいはボンベの脱着工賃によって費用が異なるためです。
小型のキッチンカー用ボンベの検査費用(5,000円程度)とはワケが違います。専門の検査事業所への問い合わせが推奨されていることからも、ボンベの脱着工賃を含めて数万円単位(例:3万円~)の支出になると推測するのが妥当でしょう。
5年または6年ごとに、通常の車検費用とは「別に」、数万円の特別なメンテナンス支出が発生する。この「隠れコスト」を、あなたは許容できますか?
2024年以降の税金優遇は?

「LPG=環境に優しい=税金も優遇されるはず」…残念ながら、その考えは、自家用においては「誤り」です。
ジャパンタクシーの購入を検討する上で、税金(エコカー減税やグリーン化特例)は非常に重要なポイント。結論から言うと、自家用オーナーが受けられる恩恵は、ほぼありません。
【エコカー減減税】2024年からLPGは対象外
自動車の購入時にかかる「自動車重量税」を優遇するエコカー減税。2023年まではLPG車も対象でしたが、税制が変更された2024年1月1日以降、優遇(免税)の対象は「電気自動車、燃料電池自動車、プラグインハイブリッド車、天然ガス自動車」などとされています。
ここで注意。
ジャパンタクシーは「LPG(液化石油ガス)車」です。「天然ガス(CNG)車」とは全くの別物。
つまり、ジャパンタクシー(LPG車)は2024年以降の優遇リストから除外されているんです。
【グリーン化特例】自家用車は対象外
購入した翌年の「自動車税」が安くなるグリーン化特例。これについても、税制の図表には、燃費基準達成車の欄に「自家用車は対象外」とはっきり書かれています。
結論:節税目的の購入は「完全に間違い」
これらの税制を分析すると、ジャパンタクシーを「自家用」で購入する場合、新車購入時の税制優遇は、ほぼ受けられないと結論付けられます。
節税目的でこの車を選ぶのは、完全に間違いです。
むしろ、競合となる同価格帯の高性能ハイブリッドミニバン(ノアやシエンタのハイブリッドモデル)が受けられるはずの税制優遇を「放棄」することになるため、購入時の諸費用は実質的に割高になります。
※税制は非常に複雑で、年度によって改正されます。あくまで一般的な情報であり、購入時の正確な諸費用については、必ずトヨタ販売店や税理士などの専門家にご確認ください。
ジャパンタクシー自家用は「買い」か

さて、購入から維持費まで、ジャパンタクシーを自家用で所有する「現実」を徹底的に見てきました。最後に、これまでの情報を総括して、「ジャパンタクシー自家用は『買い』なのか?」、私なりの結論をお伝えします。
私の結論は、「99%の人にはお勧めしないが、1%の人には最高の相棒になる」です。
ジャパンタクシーの自家用所有は、「ファミリーカー」を買う行為ではなく、「特定の目的に特化した業務用の道具」を個人で買う行為に他なりません。
プロのドライバー達が指摘する数々の不満点(収納、運転姿勢、リアエアコン、窓、積載性)は、この車が「運転手」や「所有者」の快適性を徹底的に犠i牲にし、「後席乗客の乗降性」というただ一点にリソースを全振りした設計思想の表れです。
この極端すぎるトレードオフを理解した上で、あなたのカーライフに本当に合致するか。それが全てです。
【推奨】この車が輝くシナリオ(1%の人)
① 介護・福祉目的のユーザー
家族に高齢者や車椅子利用者がおり、その送迎が日常的に発生する人。
この車の「低床フラットフロア」と「大開口スライドドア」による圧倒的な乗降性は、他のどのミニバンにも勝る絶対的な価値を持ちます。この目的であれば、この記事で指摘した数々の欠点(エアコン、LPG、収納)をすべて許容できる、最高の選択肢となります。
② 強烈な個性を求める愛好家
あのレトロモダンなデザイン、街の風景に溶け込む「深藍」の色、タクシーという車両の背景にある文化性…そういったものに強く惹かれる人。
LPGスタンドを探す手間、6年ごとの容器検査、夏場の後部座席といった数々の不便を、「個性」「趣味」として許容し、楽しめる、ごく一部の自動車愛好家。あなたも、そっち側の人間ですか?
【非推奨】後悔する可能性が高いシナリオ(99%の人)
① 一般的なファミリーカーの代替として検討している人
シエンタ、ノア、ヴォクシー、フリードなどのミニバンの代わりとして検討している場合、購入は絶対に推奨しません。
理由: 収納が皆無、後席に冷房が来ない、右後部の窓が開かない、LPGスタンドが不便、ベビーカーや自転車が積めない荷室、高速で非力なエンジン…。これらは、家族(特に妻や子供)から不満が噴出する可能性が極めて高い、致命的な欠陥です。
② 「経済性」を最優先する人
「LPG=燃料代が安い」というイメージだけで選ぶと、確実に失敗します。
理由: 期待外れの実燃費、LPGスタンドの不便さによる機会損失、対象外となったエコカー減税、そしてLPGボンベの特殊なメンテナンスコスト。トータルの所有コスト(TCO)は、同価格帯の最新ガソリンハイブリッド車より高くなる可能性が十分にあります。
あなたのカーライフにとって、あの「圧倒的な乗降性」は、他のすべてを犠牲にしてでも手に入れたいものですか? ぜひ、ご家族ともよく相談して、後悔のない車選びをしてくださいね。




