豊田自動織機TOBで非公開化へ トヨタの狙いとは

豊田自動織機 経営

「豊田自動織機 TOB」というキーワードでこのページをご覧になっている方も多いだろう。最近報じられた豊田自動織機に対するTOB(株式公開買い付け)のニュースは、多くの関心を集めている。

トヨタグループによるこのTOBは、具体的に「いくらですか」、そしてその「目的」はどこにあるのか、といった疑問を抱いているかもしれない。この記事では、提供された情報に基づき、今回のTOBについて解説する。

今回のTOBの背景、目的、そして影響を理解することは、この重要な出来事を把握する上で役立つはずだ。今回の豊田自動織機TOBにおける主なポイントは以下の二つである。

一つは、トヨタグループが非上場化を通じて統治を強化し、外部株主、特にアクティビストの影響を排除しようとしていることである。もう一つは、豊田自動織機がトヨタグループの源流であり、グループ全体の資本構造において極めて重要な役割を担っている企業であることである。この記事が、今回のTOBを取り巻く状況を理解するための一助となれば幸いだ。

この記事のポイント
  • トヨタグループが豊田自動織機に対して株式公開買付け(TOB)を行い、非公開化を目指していること
  • 非公開化の主な理由として、グループの統治強化や外部株主(アクティビスト)への対応があること
  • 豊田自動織機がトヨタグループの創業からの源流であり、資本関係において重要な位置にあること
  • TOBのスキームや買収規模(6兆円規模の可能性)、そしてその後のグループ再編への影響

豊田自動織機 TOBの基礎知識

インデックス
  • TOBとは公開買付けのこと
  • 日本における公開買付けの歴史
  • 豊田自動織機の設立と事業
  • 今回の豊田自動織機TOBの概要

TOBとは公開買付けのこと

TOBとは、テイク・オーバー・ビット(Take Over Bid)の略称であり、株式公開買付けのことを指す。これは、ある会社の株式等を、不特定かつ多数の者から、市場外で買い付ける手続きだ。買付者は、買付価格や期間などの条件を事前に公告等を通じて広く示し、株主に対して所有する株券等を売却するよう勧誘する。

公開買付けは、主に企業を買収する場合や、合併・子会社化といった企業再編を行う際、あるいはMBO(経営陣による買収)により企業を非上場化する目的で利用されることが多い。日本の制度では、金融商品取引法において、一定の場合に公開買付けが義務付けられている。これは、投資者保護の観点から、取引の透明性を確保し、株主間の平等性を図るために設けられた制度と言える。

TOBの買付条件には、買付けを行う株数に上限が設けられることがある。また、応募された株券等の総数が買付予定数を超える場合には、募集に応じた株主から按分比例の方式により買い付けることがある。このように、全ての応募株式が買い取られるわけではない点を理解しておく必要がある。

ただ、TOBは必ずしも成立するとは限らない。不成立に終わったり、買付け期間中に中止されたりする可能性も存在する。そのため、TOBの対象となった銘柄を保有している投資家は、常にTOBの実施状況を確認することが重要となる。

日本における公開買付けの歴史

日本においては、金融商品取引法(旧証券取引法)に基づき、一定の条件下で公開買付けが義務付けられる「強制公開買付制度」が採用されている。これは、有価証券報告書の提出が義務付けられている上場企業などの株券等を、発行者以外の者が市場外で一定数以上買い付ける場合などに適用されるのが原則だ。

法に定められた公開買付けは、実施する主体によって二つに分けられる。一つは「発行者以外の者による株式等の公開買付け」、そしてもう一つは「発行者による上場株券等の公開買付け」だ。公開買付けが義務付けられる主な目的は三点ある。第一に、経営権の移転に関する情報を適切に開示すること。第二に、全ての株主に対して平等な機会を提供すること。そして第三に、企業の支配権を得る際に支払われるプレミアム(支配権プレミアム)を株主間で平等に分配することにある。

この制度に基づき、公開買付けを実施する際には、買付条件などを新聞に公告し、財務局へ届出書を提出する手続きが必要になる。公開買付期間は、公告を行った日から起算して20日以上60日以内でなければならないと定められている。この期間中は、原則として公開買付けの方法以外で対象会社の株券等を買い付けることは許されない。

一方、公開買付けの対象となる会社(発行者)側にも義務がある。発行者は、公開買付開始の公告が行われた日から10営業日以内に、当該公開買付けに対する意見などを記載した意見表明報告書を内閣総理大臣に提出し、公開買付者にも送付しなければならない。この報告書には、公開買付けに対する賛否やその根拠、取締役会の決議内容などが記載される。これは、投資家が公開買付けについて判断する材料を提供し、証券市場の信頼性を確保するために重要な役割を果たす。特定の重大な事由が発生した場合など、例外的に公開買付けが撤回される可能性もある

豊田自動織機の設立と事業

豊田自動織機は、現在のトヨタグループの源流ともいえる企業だ。その創業は、グループの創始者である豊田佐吉氏が発明した自動織機に端を発している。佐吉氏は、母親の機織り仕事を楽にしたいという思いから、ムダを徹底的に排除し、品質を高める自動織機を開発した。この「ニンベンのついた自働化」という考え方は、後にトヨタ自動車の生産方式である「トヨタ生産方式」の柱の一つとなり、現代のモノづくりの思想にも大きな影響を与えている。

現在の豊田自動織機は、その創業の精神を受け継ぎつつ、多岐にわたる事業を展開するグローバル企業へと発展した。主要な事業としては、主に「産業車両事業」と「自動車関連事業」が挙げられる。産業車両事業では、フォークリフトなどの製造・販売を手がけており、世界でもトップクラスのシェアを誇る。単に機器を販売するだけでなく、バリューチェーンや物流ソリューションといったストック型ビジネスにも注力しており、比較的安定した成長が見込める事業構造を持つ。

自動車関連事業では、車両、エンジン、エレクトロニクスといった分野で事業を展開している。車両組立においてはトヨタ自動車のボディメーカーとして品質と生産効率の高さを誇り、エンジン分野ではディーゼルエンジンに加えガソリンエンジンの役割拡大を目指し、エレクトロニクス分野では電動化に対応した部品開発を進めている。特にカーエアコン用コンプレッサーは世界シェアNo.1の商品であり、電動車のニーズに対応した開発にも注力している。

これらに加えて、空港関連物流システムなども手がけている。ムダをなくし、効率化を追求するという創業以来の思想が、これらの多様な事業の根底に流れていると言えるだろう。また、トヨタグループの一員として、各事業において高い技術力と競争力を発揮している

今回の豊田自動織機TOBの概要

今回、豊田自動織機が実施したのは、自己株式を取得するための公開買付けだ。これは、会社自身が発行済みの自社の株式を買い戻すことを指す。なぜ公開買付けという方法を選んだのか。その理由として、株主間の平等性、取引の透明性、そして市場における取引状況などを総合的に検討した結果、公開買付けが適切だと判断されたためだ。

特に、トヨタ自動車以外の株主にも、一定の検討期間を与えた上で、市場価格の動向を踏まえて自己株式の取得に応じるかどうかを判断する機会を提供できる点が、株主平等の観点から重要視された。また、法令に則った公開買付けの手続きに従うことで、取引の透明性も担保できると考えられた。

一方で、市場での買付けや東京証券取引所の自己株式立会外取引(ToSTNeT-3)を利用した場合、買付価格は市場株価とする必要があるため、市場価格から一定のディスカウントを行った価格での買付けが実現できない。資産の社外流出を可能な限り抑える観点から、市場価格にディスカウントを行った価格での取得が望ましいと考えられたため、公開買付けがより優位な選択肢となったのだ。

今回の公開買付けでは、トヨタ自動車が保有する当社普通株式の一部である250万株(所有割合0.81%)を取得することが含まれていた。これは、自己株式取得を予定通り完了した場合に、トヨタ自動車が保有する豊田自動織機の株式所有割合を自己株式取得前と同等水準(約24.66%)に維持し、豊田自動織機がトヨタ自動車の関係会社であるという位置づけを維持することを目的の一つとしている。なお、本公開買付けに要する資金は自己資金により充当する予定であり、買付けに必要な資金を充当した後も手元流動性は十分に確保できる見込みであり、財務健全性は維持できると考えている。

豊田自動織機 TOBの詳細と影響

インデックス
  • 豊田自動織機のTOBはいくら?
  • TOB実施の目的とは何か
  • なぜ豊田自動織機は非上場化を目指すのか
  • アクティビストからの提案と動向
  • 豊田自動織機TOBが個人投資家に与える影響
  • 市場で売却するかTOBに参加するか
  • 今後のトヨタグループ再編の可能性
  • 豊田自動織機TOBに関するまとめ

豊田自動織機のTOBはいくら?

今回実施された豊田自動織機による自己株式の公開買付けにおける買付け等の価格は、市場価格を基礎としつつ、そこから一定のディスカウントを行った価格が採用された。具体的な買付価格については、基準の明確性及び客観性を重視するとともに、今回の公開買付けに応募せずに豊田自動織機の株式を所有し続ける株主の利益も尊重する観点から、資産の社外流出を可能な限り抑えることを目指し、市場価格にディスカウントを適用した価格で自己株式を取得することが望ましいと考えられたためだ。

買付け等に要する資金の総額は、385億7893万円と見込まれていた。これは、買付予定数である300万株を全て買い付けた場合の買付代金に、買付手数料などの諸費用を加えた見積額だ。

当初の買付予定数は300万株(所有割合:0.97%)だった。これは、トヨタ自動車以外の株主にも応募の機会を提供するという観点から、トヨタ自動車からの応募意向株式数(250万株)に20%を上乗せした数として設定された。しかし、実際の応募総数は250万9323株であり、買付予定数である300万株を下回った。そのため、応募した株式は全て買い付けられ、応募数が買付予定数を超えた場合に適用される按分比例方式は該当しなかった。

このように、公開買付価格は市場価格からディスカウントされた価格であったこと、そして実際の応募数が買付予定数を下回ったことが、今回のTOBの価格面における重要な点と言えるだろう。

TOB実施の目的とは何か

豊田自動織機が公開買付けという方法で自己株式の取得を実施した目的は、いくつかの観点から説明されている。まず第一に、自己株式を一定数取得すること自体が目的としてあった。

その上で、取得の方法として公開買付けが選ばれた主な理由として、株主間の平等性を確保できる点が挙げられている。公開買付けであれば、トヨタ自動車以外の株主にも、買付条件などを十分に検討し、市場価格の動向を見ながら自己株式取得に応じるか否かを判断する機会を提供できると考えられたためだ。また、法令に従った手続きで行われるため、取引の透明性が担保される点も重視された。

前述の通り、市場買付けやToSTNeT-3では市場価格でしか買い付けができない。しかし、今回は市場価格から一定のディスカウントを行った価格で自己株式を取得することが望ましいと考えられていた。これは、公開買付けに応募せず株式を所有し続ける株主の利益を尊重しつつ、会社の資産の社外流出を抑制する観点から判断されたものだ。公開買付けであれば、市場価格からディスカウントした価格での買付けが可能なため、これが公開買付けを選択した重要な理由の一つと言えるだろう。

加えて、自己株式の取得の一部をトヨタ自動車が保有する株式から行うことで、自己株式取得完了後もトヨタ自動車の所有割合を一定水準に維持し、関係会社としての位置づけを保つことも目的として含まれていた。これらの理由から、今回の公開買付けが実施されたのだ。

なぜ豊田自動織機は非上場化を目指すのか

豊田自動織機自身が、今回の公開買付けを直接的な非上場化の目的として公表しているわけではない。しかし、一部報道では、トヨタグループや創業家による豊田自動織機の買収提案や株式の非公開化に関する可能性が報じられており、豊田自動織機やトヨタも、一部報道について検討している段階であり決定した事実はないとコメントしている。

こうした非上場化の検討が浮上する背景には、いくつかの要因が考えられる。一つには、上場企業として四半期ごとの業績開示や株主対応に追われるよりも、非公開化することで、より長期的な視点に立った大胆な経営改革や事業ポートフォリオの見直しなどを進めやすくなるという点がある。短期的な市場からの評価を気にすることなく、将来に向けた戦略的な投資や事業再構築に集中できる可能性がある。

また、近年、資本効率の向上などを求めるアクティビスト投資家からの提案が増加しており、日本企業はこうした外部からの要求への対応が経営課題となっている。豊田自動織機も、資本効率の向上や特別目的会社を通じた非公開化など、様々な提案を受けている状況にある。こうした環境下で、市場に上場し続けることによる「大変さ」を感じ、非公開化という選択肢が検討されている可能性も指摘されている。

ただし、今回の公開買付けは、あくまで自己株式の取得を目的としたものであり、現時点で非上場化が決定した事実として公表されているわけではない。今後の経営戦略やトヨタグループ全体の再編の中で、非上場化が現実的な選択肢となる可能性も示唆されている状況と言えるだろう。

アクティビストからの提案と動向

前述の通り、豊田自動織機は、外部の株主であるアクティビスト投資家から、資本効率の向上や特別目的会社(SPC)を利用した非公開化など、様々な提案を受けている。アクティビストとは、企業の株式を取得し、株主としての立場から経営陣に対して企業の価値向上を目的とした提案や要求を行う投資家集団を指す。

近年、アクティビストは日本企業に積極的に投資を行い、経営に対して物言うケースが増えている。その背景には、「日本企業は海外企業に比べてPBR(株価純資産倍率)が低いなど、本来の価値よりも市場で低く評価されているのではないか」という見方がある。つまり、アクティビストは日本企業の「安さ」に着目し、経営改善や事業再編を促すことで企業価値を高め、そこから利益を得ようとしているのだ。

豊田自動織機のような経営基盤がしっかりしているにも関わらず、必ずしも市場での評価が十分でないと見られがちな企業は、アクティビストのターゲットとなりやすい側面がある。実際に、豊田自動織機も「様々な提案を受けている」ことを認めている。これらの提案には、必ずしも企業にとって受け入れがたい内容が含まれる場合もあるだろう。

このようなアクティビストからの圧力は、企業経営に影響を与えうる。企業は、株主の意見に耳を傾け、企業価値向上のために何が最善かを検討する必要に迫られる。アクティビストからの提案は、豊田自動織機が非公開化を含む資本政策や経営戦略の見直しを検討する一つの要因となっていると考えられる。今後も、他の日本企業においても、アクティビストの動向が経営戦略に影響を与える事例が増える可能性があるだろう。

豊田自動織機TOBが個人投資家に与える影響

今回の豊田自動織機の公開買付けは、豊田自動織機の株式を保有している個人投資家にとって、いくつかの選択肢とそれに伴う影響をもたらす。TOBの対象となった株主は、主に以下の三つの選択肢の中から自身の判断で行動を選ぶことができる。

第一の選択肢は、公開買付けに応募することだ。この場合、TOBの買付者(今回は豊田自動織機自身)が提示した公開買付価格で自身の株式を買い取ってもらえる。TOBに応募するには、指定された証券会社に口座を開設し、所定の手続きを行う必要がある。ただし、前述の通り、買付予定数を超えて応募があった場合は、応募した株式の一部しか買い取ってもらえない可能性がある点に注意が必要だ。また、TOBが不成立または中止になる可能性もゼロではない。

第二の選択肢は、市場で株式を売却することだ。公開買付けが実施されている期間中も、対象会社の株式が上場を継続している場合は、通常の株式市場で売却注文を出すことができる。この場合、売却価格は市場価格となる。今回の豊田自動織機のTOB価格は市場価格からディスカウントされた価格で設定されていたため、TOB期間中の市場価格がTOB価格を上回っていれば、市場で売却する方が有利になる可能性がある。

第三の選択肢は、公開買付けに応募も市場での売却も行わず、そのまま株式を継続保有することだ。この場合、TOB終了後も引き続き株主であり続けることになる。しかし、もしTOBが成立し、その結果、対象会社が非上場化することになった場合、その後は市場で株式を売買することができなくなる。その後の株式の取り扱いや現金化の手続きについては、当該企業が別途案内するため、企業の発表を確認する必要がある。非上場化された企業の株式は、換金性が著しく低下するというデメリットがある。

このように、今回のTOBは、保有株をどのように取り扱うかについて、個人投資家に判断を迫るものと言える。それぞれの選択肢にはメリットとデメリット、そして注意点が存在するため、自身の投資戦略や市場環境、そして公開買付条件をよく理解した上で、慎重に判断することが求められる。

市場で売却するかTOBに参加するか

前述の通り、豊田自動織機の株式を保有する個人投資家は、今回の公開買付けに対し、市場で売却するか、あるいはTOBに応募するかの判断を迫られる状況になった。どちらを選択するかは、個々の投資家の考え方や状況によって異なってくるが、判断材料となるいくつかのポイントがある。

公開買付けに応募する場合、事前に定められた公開買付価格で株式を買い取ってもらえる可能性がある。手続きは指定の証券会社を通じて行う必要があり、応募する株式数によっては、買付予定数を超過した場合に按分されるリスクがある。しかし、市場価格の変動に左右されず、一定価格での売却が期待できるというメリットがある。

一方、市場で売却する場合、TOB期間中の市場価格で株式を売却することになる。市場価格は日々変動するため、売却したいと思った時点での価格によって手にする金額が変わってくる。今回の豊田自動織機のTOB価格は、市場価格から一定のディスカウントを行った価格であった。このため、TOB期間中の市場価格が公開買付価格を上回っている場合は、市場で売却する方がより多くの資金を得られる可能性が高くなる。自身の株式の買付単価や、市場の需給状況(板情報など)も確認しながら判断する必要がある。

また、TOBに応募するには指定の証券会社での手続きが必要になる場合があり、普段利用している証券会社と異なる場合は口座開設が必要になったり、移管手数料が発生したりする可能性もある。市場での売却であれば、通常取引している証券会社で手続きが完結する場合が多いだろう。

結論として、今回の豊田自動織機のケースのように、公開買付価格が市場価格からディスカウントされている場合は、市場価格がTOB価格を上回っているならば、市場で売却することが経済合理性の観点からは有利になる可能性が高い。しかし、市場価格は常に変動するため、確実に売却したい場合はTOBへの応募を選択するという考え方もある。どちらを選ぶかは、手続きの手間、価格の確実性、そして自身の投資判断に基づくことになる。

今後のトヨタグループ再編の可能性

今回の豊田自動織機による自己株式取得のための公開買付けや、それに先立って報じられたトヨタグループによる豊田自動織機の買収・非公開化検討のニュースは、今後のトヨタグループにおける再編の可能性を示唆するものと考えられる。

トヨタグループは、トヨタ自動車を頂点とし、多数の関係会社で構成される巨大な企業体だ。長い歴史の中で、各社がそれぞれの事業分野で専門性を高め、グループ全体の競争力強化に貢献してきた。しかし、自動車産業を取り巻く環境は、電動化、コネクテッド、自動運転といった技術革新や、グローバルな競争の激化により大きく変化している。このような変化に対応し、グループ全体の連携を強化したり、経営資源をより効率的に配分したりするために、グループ内の再編が進められる可能性がある。

今回の豊田自動織機の件については、前述の通り、非上場化も含めた検討が行われていることが報じられている。もし豊田自動織機が非公開化され、トヨタ自動車による支配力が強まるようなことになれば、グループ内での意思決定がより迅速になり、重複する事業の整理や新たな事業への投資がスムーズに進むといったメリットが考えられる。

また、トヨタグループは既に他の関係会社においても再編ともいえる動きを見せている。例えば、豊田自動織機は、子会社であったアイチコーポレーションの株式の一部を伊藤忠商事に譲渡し、同社を持分法適用会社とした。これは、新たなパートナーとの連携を強化し、子会社のさらなる成長を目指すための判断であり,グループ内の位置づけを見直す一例と言える。

これらの動きから、トヨタグループが、外部環境の変化やアクティビストからの提案なども踏まえながら、グループ全体の最適化を目指した再編を今後も進めていく可能性は十分に考えられる。上場子会社の非公開化や、事業領域の見直し、外部企業との連携強化など、様々な形での再編が行われる可能性があるだろう。こうした再編は、グループ内の各社やその従業員、そして株主に対して、多かれ少なかれ影響を及ぼすことになると考えられる。

豊田自動織機TOBに関するまとめ

  • トヨタグループが豊田自動織機に対してTOBを実施する方針を固めたと報じられた
  • トヨタや創業家、グループ企業が出資するSPCを通じてTOBを行うスキームだ
  • TOBの目的は豊田自動織機の株式非公開化だ
  • 非公開化によりグループ経営の統治強化を図る狙いがある
  • 海外アクティビストからの要求に対応するため、外部株主の影響を排除する目的もある
  • 買収総額は6兆円規模に達する見通しだ
  • 買収資金としてメガバンクからの融資も活用される方針だ
  • TOBは5月中にも実施されるとされる
  • 4月26日の報道で非上場化検討が浮上した
  • 報道に対し、トヨタおよび豊田自動織機は決定した事実はないとしつつも様々な可能性を検討中とコメントした
  • 報道を受け、5月20日の豊田自動織機の株価は急騰し上場来高値を更新した
  • 豊田自動織機はトヨタの源流企業であり、グループ持ち株構造の要となる存在だ
  • トヨタは豊田自動織機の約24%を、豊田自動織機はトヨタ株の約9%を保有している
  • 自己株式取得の方法として公開買付けが、株主間の平等性や取引の透明性の観点から適切と検討された
  • TOB完了後の決済開始日をもって、アイチコーポレーションは豊田自動織機の子会社ではなくなり持分法適用会社となる予定だ
  • 今回のTOBはトヨタグループ全体のガバナンス再構築に向けた動きと見られている
  • 今後、他のグループ会社への影響も避けられない可能性が指摘されている
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